バイオ施設を考える


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迷走する学習院のP3施設

   迷走する学習院のP3施設

「学習院大学自然科学研究棟(仮称) 近隣説明会」報告
5月11日(日)10:00~15:30 学習院輔仁会館西館 参加者約百人 
報告者・木村
  
 前回の説明会と同様、今回もまた会の冒頭、学習院側から、造る実験施設はP1レベルであり、P3レベルではない旨の打ち消し発言があった。今回は理学部教授の出席もあり、講義担当者としての、時間もかけての、安全性の強調があった。すなわち、予定している遺伝子組換実験はP1レベルのものであり、「人に感染して病原性を示すウィルス、細菌等を用いた実験はしません」から、安全である、地域住民に害を及ぼす恐れはないとして、安全性が強調された。
 
 他にいろいろ説明があって時間もだいぶ経過し、昼飯時もすぎていたから、この安全話に納得して帰った方もいたかもしれない。だが、この話には重大な見落としがある。

 「人に感染」することがないから「病原性を示す」こともないという意味で安全だとみなされていた「ウィルス、細菌」が、何らかのきっかけで突然「人に感染して病原性を示すウィルス、細菌」に変化してしまうのが、遺伝子の世界でみられる現象である。この現象は、近年の鳥インフルエンザウィルス騒ぎで記憶に新しい。

 この現象は、自然界における突然変異によっても起こるが、人為的な遺伝子組換によっても起こりうる。その場合の遺伝子組換は、ことの性質上、P1レベルのものである。なぜなら、P2やP3レベルはもともと安全でない「ウィルス、細菌等」を扱うからにほかならない。

 安全な「ウィルス、細菌等」を扱うP1レベルだから安全だという一見明快にみえる議論は、安全なものが危険なものに変化するという遺伝子界特有の現象への警戒心を欠く点において、もとより危険なものを扱う心構えが不可欠なP3施設の場合よりもかえってより危険とさえいえるのではないか。学習院理学部の諸教授によるP1レベルの安全性についての過度の強調には、この種の疑念を感じずにはいられない。こんなに警戒心のない人々が担当するのでは
P1レベルでも危ないと思わずにはいられない。

 だが、疑念はそれだけにはとどまらない。午前10時から始まって午後3時半までつづいた説明会の半ばをすぎた頃に、ある質疑応答を契機にして、造る実験施設についての説明に異変が起こった。それまでは、学習院は造る実験施設はP1レベルであり、P3レベルではないと説明していた。ところが、その実験施設には、安全を期するために、加圧滅菌装置としてのオートクレープと陰圧作業台としての安全キャビネットを設置すると説明を付加したのである。

病原体を「物理的に封じ込める」装置としてのオートクレープと安全キャビネットはP1レベルの実験室には設置を義務づけられてはいない。それらの設置が義務づけられているのは、P2レベルの実験室であり、この2つの装置がP2レベルの指標をなしてもいる。したがって、造る実験室として学習院が予定していたのは、P1レベルではなくてP2レベルだったということになる。

 こうして説明会の前半で強調された、造る実験施設はP1レベルであり、P3レベルではないから安全であるという説明が、もろくも崩れた。学習院はP2をP1と偽って説明していたのである。

 振りかえると、ことの発端は、造る実験室がP3施設だという情報を学習院側が住民に伝えて、住民の反発をかったことによる。反響の大きさに慌ててか、学習院は造る実験施設はP1レベルであり、P3レベルではないと訂正したのだが、そこにも偽情報を紛れ込ませていた。鎮静効果をねらってか、本当はP2なのにP1と偽って訂正した。この訂正は偽りだから、偽装である。こういう姑息な手を使うから、事態はよけいこじれることになる。

 このように偽情報にさらされたのでは、住民はたまったものではない。最初はP3だと驚ろかされて、次はP1だとサバをよまれて、じつはP2でしたとなった。しかし、本当にP2どまりなのだろうか。P3→P1→P2と振り回されただけに、本当はやはり最初のP3なのではないかという疑念は拭いがたい。

事実、それを疑わせる建物構造の情報がある。住民が実験棟の設計図の略図を見せてもらったところ、前室付きの実験室らしきものがいくつかあったという。学習院側の説明では、それらはP3実験室ではなく、か弱いノックアウトマウス飼育用等の工夫だそうだが、仮にそうだとしても、その前室付きの部屋にオートクレープと安全キャビネットを持ち込めば、基本的にはP3実験室の要件が整うことになる。要するにその気になりさえすれば、いつでもP3実験室に切り換えることができるように設計がなされているのは事実である。

 住民が学習院に疑いの眼を向けるのは当然だろう。学習院は説明会の資料に文字を大にして「P3施設は今後も決して保有しません。従って、P3レベルの実験は行いません」と記しているが、P3→P1→P2というふうに今まで何度もPXのXを変えてきたことから、これを信用しろというのが土台無理である。信用は、学習院という看板によってではなく、嘘をつかない、小細工をしない、誠実な姿勢・行為によってえられる。P3施設の迷走ぶりからみて、今の学習院は社会的信用を失っていると断じるほかない。

 それでも、学習院が質疑応答における説明不足・回答不足を認めて、再度説明会を開き、それまでは工事を強行しないという姿勢であれば、まだ住民からの信用の回復の機会があったかもしれない。しかし、学習院は自らその機会を断ち切った。説明会の終了と5月19日からの工事の着工とを宣言して、納得のいかない住民を残したまま席を立った。

 昼飯抜きの5時間半におよぶ質疑応答だったが、生活と生命にかかわる事柄だけに住民は真剣だった。終わった時にはさすがに空腹を覚えた。けれども、それはさわやかな空腹だった。目白の住民とは同じくP3施設に取り組む者としてこれからも交流を深めて行きたいと思う。
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by p3sisetu | 2008-05-12 11:34 | 出来事